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KPPツアーのソロ演技構成の経緯総括

【某ツアーのソロ演技構成の経緯総括】

先日発売された某ツアーDVD、自分の演技を一度も観れてなかったので、反省の意も含めて観てみました。 普段自分は完璧秘密主義なので紹介や経緯など語らないのですが、今回のツアーは思い入れがあったので至った経緯を書き留めとこう思いました。 自身に向けた長文なるので読書好きなご興味ある方だけどぞー

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実はこのステージで私の密かな夢が叶いました、それは ・妄想した衣装で『クラウン』をしながら演技をやってみたい というもの。

クラウン(ピエロの本式名称)のジャンルは専門家でも本当に難しくてしかもアクロバットもやるとなるとCirque du soleilでもクラウン+アクロの2つをやらせて貰えるのは本当少ない(ってか出来ない) 元選手で元役者の自分には両方の難しさを知っていたので挑戦したい気持ちがありました。

それにアクロの殆どの人は凄技を決めて『凄いカッコイイ』言われたいのが普通だが、自分は皆が思うであろう感性の正反対の方向性に興味と欲求がありました。だって皆と同じカッコイイことやっても面白くなくない、って思うのはおかしいのかな。 そんなわけで『外道・オチャラケ・愚か者』の言葉が似合う真逆のキャラクター、『クラウン』をやってみたいと思たわけです。 それに加えて 明らかに分かるような単純なピエロの衣装ではなく、私のイメージした衣装でピエロを演じたら面白いだろうなと欲望がありました(イメージに一番近かったのが宇多田ヒカルのPV『Traveling』の衣装?) しかしこの言葉に出来ない感覚的なイメージを分かる人は誰もいないし、妄想の中で楽しんでました。 だって大抵パフォーマーはやりたい思った通りになることは皆無で、 『現代の感性にシンクロする奇抜・斬新且つ都会的排他的要素の断片化されたデザイン衣装を着たクラウンで自分の得意分野の種目でステージで演技をしたい』なんてまず無理でしょ。 だからまさかまさか衣装と素材とクラウンがイメージ通り決まったときは

神キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━ッ!!

って思ったわけです。 だから私の人生でイメージ通りのクラウン&アクロを出来るのはこれが最初で最後になるかもしれないので、やれるものを出来るだけ詰め込む勢いで構成を練って攻め望みました。 実際やってみると これが本当にシビアな事をよくもまぁやり遂げたなと今更ながら感じた。 独創性・安全性・技の難易度と順番を考えて練り込みまくった演技構成でした。

当初はウォールトランポリン(壁トランポリン)をする予定でしたが 壁とトランポリンの間にセットと証明があり 練習時間も確保できなかったため諦めました。 途中でプレゼント箱に乗る演出を考えて結構好評だったので使いました。

【演技業順】 1、ダブルダフィー伸身2回宙返り?  体操界でこの技は存在しないので本式名称はありません。脚を開くのはスキーモーグル界ではあるものの2回転は存在せず、脚を開いて回転するのは体操界では減点対象になるのでいわゆる 体操界とモーグル界のタブー技を組み合わせた技。 2回転目に脚を入れ換えたのは あのステージは派手な照明と色彩とスモークが立ちのぼっている2回転技には危険な状態なので1回転目と2回転目の境目のタイミングで着地面を確認するためのキッカケ作りとして左右脚を入れ替えました。 ステージがカラフルなので普通の二回転だと平凡に見えるので動きを付けた方が世界観に合うと思ったので確実に二本目の技に繋がるように難易度も考慮して1番目に採用。

2、スイッチキック、ダブルフルツイスト?  これも体操界に存在しない技 通常の後方2回捻りはありますが捻りを掛ける前に空中で2回脚を入れ替えてから捻る技術は本当に難しく、国内では私だけ、世界でも殆ど出来る人いない技。因みにCirque du soleilでは誰一人やっていません。世界の舞台で初お披露目する予定の極秘技でしたがこのアリーナツアーに先に呼ばれましたのでこのステージで解禁・お披露目させて頂きました。

3、??くねくね技??ww  完全なお遊び技! 1・2本目の技の後に中間技は全く種類の違う技を入れた方が後半技をより良く魅せれるのではないかと思いお遊び技。こんな技、競技会にはありませんw。 サーカスの世界でこれをやるとお客さんがウケるのを知っていたので採用(シルクの“O[オー]”でも使用してます)。お遊び技とはいえ平衡を保ったままくねくねさせて綺麗に落ちるのは意外と難しいんですよ。ここで呼吸を整えてました。

4、キックトリプルtwist  横回転『だけ』の技入れるのは面白いかなの発想から採用。普通の体操選手やトランポリン競技者は大抵宙返り技をやればとりあえず凄い言って貰える安心感から連続で行う人が大多数ですが、同じ系列の技を繰り返しやってもお客さんは見慣れて飽きてしまうので(ツアー前にラスベガスでシルクのショーを観ましたがトランポリンの連続技だけやった人だけ拍手貰えてなかったのを観たので)中間技は宙返り技なしで難易度高めの意外性のある技入れた方がいいかなと、それに当初体力的にも2回捻りを予定してましたが、シルクの『クーザ』の人に対抗して負けじと3回捻ってやりました。この技を採用した理由は5本目の技に繋がることになります

5、ローユン(側方屈伸2回宙返り4/3捻り)  後半技はとにかく高難易度にこだわりました。しかも単なる難しい技ではなく、玄人関係者も観ても認められる技にしたかったので考えた末、体操界では絶滅危惧種にあたるこの技ローユンを採用。 一回転目は身体を横に向けての側転宙返り、残りの二回転目で捻りを掛けて着地する見かけが派手な技。簡単に言えば、ブレイクの人がよくやる手をつかずに側転する技+宙返り技に1回横に捻る技を空中で繋げて一気にやってしまおうみたいな技。体操の世界大会でもなかなか見かける事がない珍しい技を日本の音楽ツアーで発表したらさぞ驚くだろなとの野心から採用。 しかしこの技最大の落とし穴がありまして、一回転目は横にまわるので前半の技と同じ向きではお客さんに背中を向けしまうので、反対向きでスタートしたいが為にあの4本目の技を採用したのですが、 お客さん向きに側転宙返りをした途端、照明さんのライトをモロに受けて目潰し食らってしまい平衡感覚狂って空中で着地面を見失ってしまいました。必死に地面を探して回転とタイミングの勘だけを頼りにしたのであんな着地になりましたが転倒は避けられのでよかった 難易度・独創性共にトップクラスの技

6、バックレイダブルフルアウト  (後方伸身2回宙返り2回捻り) 本来やる予定のなかった6本目の技。クラウンの前半思い切り動きまくって演じた後に上記の難易度5本の技を入れた時点で体力的にも大変でかなり攻めたな思いました。 通常、あれだけの質・難易度を組み込んだ技なら通常3~4人でしょ。他の舞台で使うであろう『魅せ技』、『トリ技』、『大トリ技』を一人でピエロやりながら誰が出来るの? ですが振付演出の方から 『もっと観たい』と要望されたのでチャレンジしてみました! でも曲の尺の関係で6本入れられるかが問題でしかも最終公演まで6本目なんかやったことない、何やるか直前まで決まってない。のに上記の5本のレベルを超える技は相場で『3回宙返り』か『2回宙返り2回捻りor3回捻り』しかない。ホントに悩みました。 3回宙返りはショーの世界では大トリの定番ですが今回はサーカスではなく、一般人にはこの難しさが理解されず、ただ単純に回ってるっていう反応が多く、練習環境なども含めリスクや難易度の割にウケがよくない。 となると難易度順に考えられるのは2回宙返りに捻りを2~3回加えた技が必然的に決まってくるが、空中で2回捻ろうが3回捻ろうがお客さんには分からない。なら3回捻りで失敗のリスクが多いなら2回捻りで綺麗に成功させた方がいい。 しかし、通常の2回宙返り2回捻りの「フルイン・フルアウト」、一回転目1回捻って、二回転目も1回ずつ捻る技では着地面が見えやすくて体操界の玄人レベルの世界では『無難』な技として位置付けされている。そんな技を大トリで採用しても「大トリで無難な技を選ぶあいつは大したことないな」なんて評価されたらたまらない。そこで考えたのが、 2回宙返り2回捻りの中でも技術的に リスクのある「一回転目は普通の身体を伸ばした宙返り、二回転目に空中で一気に2回捻りをやってしまおう」すなわち『レイ・ダブルフル』。海外では捻るタイミングの位置を操れるのは評価されるが、日本ではその意識が薄い。日本のアクロバット界でこの技を区別して出来る人はいるのかな?知る限り確実に出来る人はいないので 国内音楽ツアーでこんな技使いこなすヤツがいたのか言わせるくらいの難易度で見栄え的にも面白く、一般人・熟練者が観ても評価されてシルクドゥソレイユの『ミスティア』の役者をしながらアクロやってる人の最高技でもあったし、あっと言わせられるテクニックを魅せる大トリには申し分ないと判断して採用。

―っと、決定したのが本番中の3本目の技をやっている時。

とはいえこの技、この時普段の練習で試したことはなく(なので代々木1日目はコケましたが)、絶対的に自信があったのは10年前。当時のタイミングの感覚を思い出して思いっ切りやってみました。ただ6本目入れる為に曲の尺は変えられないのでクラウンの演技も若干早めにして予備ジャンプを減らしたのでかなりのハイペースでホント疲れた、これ、もし1本でもミスしてたら間に合わなくなってたのでよく成功させたなと思いました。 着地はともかく転倒しなかっただけでもよかった。

詳細はまだ沢山ありますが、このアリーナツアーが始まる直前に 振付演出の方が何度も 「もうこれ以上の舞台は作れない」言っていましたし 「シルクドゥソレイユを超えよう」と約束をしていたので、質はともかく 内容は間違いなくぶっちぎりで超えてやったと思っているので約束守れてよかった。この6本揃えられたのは奇跡でした。 この先,30~40年日本でこれを超えるパフォーマーは出てこない言える構成内容を作れました。

そして何より嬉しかったのは 「あの演技を作った振付演出家の人は凄い」と評価されたこと。 基本、舞台の全ての賞賛は監督演出家に向けられるべき。 料理に例えれば、いくら最高級の食材を用意してもそれを美味しい料理に調理するのは料理人。だから我々は最高の技術を提供して、後は演出家に身を委ねればよい。舞台はメイン&演出家のもの。勿論パフォーマー自身の演出の軸は確立していることが前提だが、この褒め言葉は私個人の演技が演出家の創り上げた舞台の演出にマッチしていた事を証明している。

それと 今回の最高の褒め言葉が 確か、アーティストさんの作曲者の方の友人?の方から 「ピエロの方ですよね、あれメッッッチャクチャ感動しました!!!」 それからお客さんから 「すッッッごく楽しい演技でした」と直に言われたこと。 嬉しかったのは「凄い」ではなく 「感動した」「楽しい」と評価されたこと 「凄い」を超えた演技が出来た事に安心しました。 つまり、『魅せる領域での演出が出来た』 ということ、そう評価してもらえた事がよかった。 観客にはおもちゃ箱の世界を楽しそうに縦横無尽に飛び回るピエロに見えたのかな。セットと照明が派手だから技のバリエーションも意外性のある技の方が世界観にマッチするしね。

色々な意見はあると思うのでちょいと持論ではあるが 国内のパフォーマーがなぜイマイチ評価が低いかというと、そのジャンルの背景・演出の意識の位置づけが違ったり中途半端の人が多い。確かにアクロバットの世界は『凄い』言われてなんぼですが、 個人的には

『凄い技をやって凄い言われる(感じる)のは当たり前』

アクロバットは人に魅せるレベルになるまでの敷地が異常に高い。 ダンスのアイソレーションとアクロバットの1回宙返りが同じ位置づけと思った方がいい(個人的意見) そう考えれば、ステージ上でダンサーがアイソレーションだけやってお客さんは喜ぶ? だからパフォーマーが1回宙返りだけやっても響かない。そして技だけ決めても薄く見えてしまいます。アクロバットは非日常的な技が多いから1回回るだけで凄い思われるため、正解だと錯覚してしまう。実はそうじゃない。 多分魅せ方『など』を知っているダンサーの達人は、そういった薄っぺらいパフォーマー達の歴史的背景・熟練性・意識の位置づけの違和感に本能的に感じているはず。 『凄いことやっているけど…』みたいな感じね。

国内でダンサーとアクロの間に違和感というか温度差があるのはこれまでのアクロの人達に原因がある。

ダンスを『動ける』のと『踊れる』のは違うように アクロも『技が出来る』のと『技を魅せる』のは違う。

空中で回れるようになる苦労は理解する上で、宙返りをダンスのアイソレーションレベル、ジャンルの背景までやり込まないと魅せる領域まで到達しない。 シルクドゥソレイユが最高峰いわれる理由はそのアイソレレベルが2回宙返りとかだったりするわけだが、そのものに対する情報量と詰め込む作業は正直ダンサーや役者のほうが上手。 ダンサーや観客のアクロバットに対するニーズは想像以上に高いのをアクロ達はもっと自覚するべき。  洋服のデザインだって、線一本の位置や太さ、文字の一部分を変えるだけで買うか買わないが分かれるくらいなのだからそれは技のテクニックなども一緒。 『簡単な技』と『簡単に見える難しい技』は紙一重 後者の領域までいって初めて魅せる領域のスタートライン。長き険しい道のりを覚悟すべき。 それを日本のパフォーマー達に気付いて欲しい意図もあって今回ギリギリまで詰め込んで攻めました。 (個人的見解なので御了承を)

とはいえ今回の出来は20点、散々で力不足100点にはほど遠い まだまだ足りないものはあるので、 どのアーティストに呼ばれても最良の演出のお手伝いが出来るように進化させます。

そしてこれからも

わたしの代わりはいないことを証明し続けます。

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